ほどよい愛

「今晩から札幌に出張だ。週末はまるまる向こうだから会えないな」

出張…。
週末会えないから、夕べ来たのね。

「札幌って、ホテルの内装デザインでしたっけ?」

「そう。コンペにかかりきりで、納期ギリギリだ。」

テーブルに向かい合って朝食を取りながら、恭汰は苦笑い。

「納期って?いつですか」

「ん。あさっての日曜」

「え!全然時間がないじゃないですか!間に合うんですか?」

持っていたコーヒーカップをテーブルに置いて、思わず語尾も荒くなる。

「なにがあっても間に合わせるさ。どうしても、な」

安心させるように笑う恭汰に、私も少し笑った。
けれど、その少しの笑いでさえ、冷たく固まった言葉が恭汰の口からささやかれた。

「内装設計の今村も一緒だから、あいつがなんとかするだろ」

つぶやきながら、何かを思い出したように口角をあげる恭汰。

…私の心、固まってしまって、痛い…。

今村結衣。
この5年あまり、恭汰を慰め続けてきた人。
そっか。札幌に一緒に行くんだね。

そして、また慰めるの?
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