ほどよい愛
時計が23時を指す頃に恭汰は帰ってきた。

玄関に出てきた私の腰を引き寄せると、唇を落としてくる。

私も恭汰の首に腕を回して熱く応えた。
いつもより積極的に。

「そんなに寂しかったのか?」

「…うん。いつも寂しい。会社で会えなくなったらもっと寂しい」

「会社…?葵に異動の話なんて出てないぞ」

「異動じゃなくて退職かな?」

私の目を見つめて戸惑う恭汰の手を、私のお腹にあてて。

「でも、この子がいたら寂しくないかも」

「…!」

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