ほどよい愛
「知り合いか?」

背後からの低い声に振り向くと、不機嫌そうに見ている恭汰。
その視線は、私の目の前で興奮気味に話す慎也へと向けられている。

……なんだか、今まで見た事のない恭汰?

「あ、KH建設の園田慎也です。姫…いや、葵とは高校時代の同級生で、びっくりです」

「ねえ、今まで打ち合わせで会わなかったね」

「ああ、今北海道にも担当持ってて先週まで行ってたからな。今日の打ち合わせだけは出ろって言われて嫌々戻ってきたけど、葵に会えてよかったよ」

「うん。わたしも会えて嬉しいよ」

慎也は、優しく笑うと私の頭をぽんぽんと軽くたたく。というか撫でてくれた。

「幸せにやってるか?」

「うん…。」

少しの戸惑いは、慎也にはばれたみたいで。一瞬目が悲しげに細められた。

「葵の唯一の高校時代の恋人としては、気になるんだけど」

「え…!?」
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