ほどよい愛
「あいつ…、葵の事が本当に大切みたいだな」

見上げると、恭汰が苦笑しながら私を見ている。

「俺が余計な事考えないように、あえて聞かせて帰ったな」

「余計な事」

「…わからないか?」

「……。」

首をかしげる私の耳元に顔を寄せると

「嫉妬だ」

口早にささやかれた言葉を理解するのに、私の全部の脳細胞を働かせないといけないくらい、わけがわからなくて、固まってしまった。

「…っ!」

私の顔をのぞきこむ恭汰は、お互いの部屋でしか見せない強気で優しくて、そして温かい瞳をしていた。

「ま、今晩は楽しんでこい。飲みすぎるなよ。遅くなるようなら俺の部屋に泊まれ。そのほうが近いだろ」

「え…いいの?」

「いいよ。そうじゃなきゃ合鍵渡してないよ。ちゃんと持ってるな?」

「あ、あります」

目で頷くと、恭汰はその場を離れ、軽く打ち合わせを続けていた人の輪に入っていった。
< 50 / 302 >

この作品をシェア

pagetop