ほどよい愛

「私ね、恭汰の事少しずつわかってきて、今何が食べたいとか何が気になってるとか。隣りにいるだけでわかる幸せを感じたり」

「……葵さんかわいいなあ」

実菜さんのつぶやきに少し照れてしまう。

「…でも、私の事どう思ってるのかとか、誰を一番大切にしているのかがわからなくて」

少し飲み過ぎたかな?うまく話せない。
普段泣かないのに目が滲んでくる。

「わからなくて逃げたいって思う以上にどんどん好きになっていって」

「高校の頃に恭汰の模型見たから今、父さんと母さんと同じ道を進んで。これが私の天職って思えるようになったけど…」

「…けど?」

じっと聞いていてくれていた慎也の顔を見ると、我慢していた涙が落ちてくる。

「私…、恭汰の模型も知らずに、恭汰の事も知らずにいればどうだったかなって。考えちゃって」
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