ほどよい愛
気分が悪くなった私を家まで送ってくれるという慎也と実菜さん。
タクシーで帰るから大丈夫だと言っても
『送っていく』
と一緒にタクシーに乗ってくれた。

飲んでいたお店からは、私の部屋より恭汰の部屋のほうが断然近くだから、明日から出張の慎也の事を考えて恭汰の部屋に送ってもらった。

男の一人暮らしにも関わらず綺麗に片付いている部屋に興味津々の慎也。

「すっげぇすっきりしてるな。葵が片付けてるのか?」

「ううん。一人暮らし長いから、なんでも自分でできるみたい。私は何もしないよ」

「ふ~ん。ま、好きな女は、側にいてくれるだけでいいしな」

「…慎也。にやけてる」

「お?そっか?」

照れて慌てる慎也は、実菜さんがいる台所に様子を見に行こうとして、床に置いていた私のカバンにつまづいてカバンの中身が散らばってしまう。
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