ほどよい愛
「あ、悪い」

慌てて中身をカバンに戻す慎也。

ちょうど携帯をカバンに戻そうと手に取った時、着信音が鳴った。
突然の音にびっくりした慎也は、反射的に電話に出てしまった。

ソファでまだぼんやりしていた私はその様子を見ていた。

「もしもし」

携帯にそう言う慎也だけど、その後黙りこんで怪訝そうな顔をしている。

「どうしたの?誰から?」

「…無言。いたずらか?」

「…今までそんなのないよ」

お酒のせいではっきりしない思考回路の中で、二人して首をかしげると。

台所から慌てて実菜さんがきた。手にしていたグラスをテーブルに置くと、慎也の手から私の携帯を取り上げた。
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