ほどよい愛
何の事かわからないまま慎也を見ても、嘘なんかついていない真剣な顔が俺を見つめている。

「何の事だ?」

ふっと表情を緩めて口を開きかけた慎也に、部屋の入口から結衣の声が響く。

「慎也くん!会社から電話だって。隣りの秘書室につないでるから取って!」

「あ、ありがとうございます」

慎也は、苦笑しながら軽く頭を下げると

「とにかく、葵の事頼みます」

そう言い残して部屋を出て行った。
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