ほどよい愛
ハヤシライスの鍋を温めながら、半分落ち込んで考えていると、

ガチャッ

と玄関の鍵が回る音がした。

え!?誰?

鍋の火を止めて、不安気に玄関に行くと。

「恭汰!」

「…ただいま。…まだいてくれた」

少し疲れた声でつぶやくと、恭汰は荷物を廊下に放り出すと同時に私を引き寄せて抱き締めてくれた。

「…もう帰ったかと思ってた」

耳元でささやくと、私の顔を両手で包み。

今までの中で一番甘くて深いキスを落とされた。

「葵…。葵…」

キスの合間のささやきが何故かせっぱつまっていて、私も同じだけの深いキスで応えた。

恭汰の背中に回す腕にもぎゅっと力と愛情をこめて。

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