ほどよい愛
「…うん。わかってる」

そう言うと、恭汰の体に全身包まれて。

私の体も心も、恭汰に持っていかれたような気がした。

恭汰のキスや手の温かさを感じながら、私が今まで守ってきた逃げ道が、どんどん閉ざされていくのを感じながら、それがとても安心できるものだと知って、私からも、恭汰を愛した。

恭汰のいない時に、部屋の合鍵を使ったのも初めて。

恭汰の部屋から明け方帰らずに、その温かさを感じて迎える朝も初めて。

それは、実は自分が望んでいた事。
小さな小さな事だけど、実現して嬉しい。

けれど。

一番嬉しいのは、恭汰が言ってくれた。

『明け方帰るな』

ずっと側にいられる気がした。
いてもいいような気がした。
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