ほどよい愛
「う~ん。協会の人は返してくれるって言ってるんだけど…」

そこで言葉を濁す今村さん。

「…けど?」

「相模くんが、もういらないから協会にやるって言ってるの」

「いらない……」

肩をすくめる今村さんの言葉に呆然となる。
床に置かれた模型。

初めて見た高校三年の時以来、何回見入ったか…。

私と透の人生が再び動き出すきっかけになった大切な宝物なのに。

模型の中央の螺旋階段を見ながら、唇をかみしめる。


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