ほどよい愛




「さ、どうぞ」

「…すみません」

「ふふ。涙止まって良かったわ」

会議室に並んで座り、今村さんは私が落ち着くのを待ってコーヒーを入れてくれた。

温かいコーヒーを飲みながら少しずつ我にかえると、同じように少しずつ恥ずかしくなってくる。

「相模くんがあの模型を手放してもいいって思うのには理由があるのよ」

唐突に聞こえてきた言葉に顔を上げると、声に出しながらも、悩んでいるような今村さんの瞳。

「…私が言うべき事じゃないけど」

急にわきあがる不安感で心臓の音しか聞こえなくなる。

聞いてしまうのが怖い。

でも…。

じっと。私は今村さんの言葉を待った。
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