ダンスナンバー
倦怠サンデー
ああ。
早朝のまばゆい光が漆黒のグランドピアノに降りそそぐ。
白で統一された小綺麗な部屋で、壁の一面くらいある窓を開け放つ。
真っ白なカーテンが風に吹かれてゆったりと揺れて、まだ朝露が滴ってきらきらしている中庭に遊びにきた雀と目が合う。
グッモーニ。
空間に流れるピョートル・チャイコフスキーのピアノソナタは、
これ以上ないほど優雅で繊細で、かつ大胆で詩的で素敵で、もうとにかく素晴らしくいいのだ。
って、そりゃ当然。
だってそれは、このおれが弾いているのだから。
で、
今頃あれだろ?
おれの同級生たちは薄暗くってタバコの煙が充満した空気のひどく悪い部屋で四角い卓を囲んで、
じゃらじゃらじゃらと、ちまちまとした金の遣り取りをして「たんやおーー」とか「りーずもーー」とか言いながらきゃいきゃいやってんだろ。
いいですね。楽しそうですね。
って、そんなのおれは御免だけどね。こんなに朝の空気が気持ちいいんだから。
だいたいおれがそんな場に行ってしまったら、むやみやたらと勝ってしまって、
せせこましくも確実に貧富の差が拡大することが目に見えている。それはちょっといい気分じゃないよね。
春の朝はこんなに清々しいものなのに。