ゆうこ


  
 何となくこういう話になるのだろうと、優子は醒めた気持ちで予感していた。 吉田に連れてこられた時から、男の欲望に晒(さら)されることになるのだ、それが私の仕事なのだとわかってはいた。 しかし、だからと云って自分を偽って人に媚(こ)びることは出来なかった。 いくら困っているとは云え、お金のために自分を犠牲にすることなどイヤだった。 
 郷田のようなつまらない男でも、世間では会社の経営者として一目置かれ、それなりの力を持っていて、家では一家の主人として振る舞っているのが優子には納得できない気がした。 ただ、お金があると云うだけで、人柄に関係なくこの社会では認められると云うことが、優子には不思議だった。 何故、人間的に素晴らしい人だけがみんなに認められ、お金持ちになれるように社会はなっていないんだろう、そうだったら素晴らしいのにと、優子は今井を想った。 近いうちに、おばさんに会いに行こう、そう思うと郷田といる時間も我慢できそうな気がした。 
 
 優子が席に戻ると、郷田はバーテンと何か話していたが、じゃあ、と言うと、優子に向き直った。  


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