ゆうこ

 しかし、私たちは店の前で別れた。 
 「じゃあ、又ね」 
 私が言うと、ゆうこは胸の前でいつもの様に小さく手を振った。 優子の目に涙が滲んでいた。
少し歩いてから、私はゆうこを振り返った。 ゆうこの足跡が降り続く雪に埋もれ、その後ろ姿が白い闇の中に消えていった。  
  
 
        



      




     *
 あれから四年が経った。今、私にも大学受験の季節が巡ってきて、その大きな流れの中で知識を詰め込まれるだけの無味乾燥な毎日を送っている。
 
 あの時が、私がゆうこを見た最後だった。 
 何故ゆうこが突然姿を消したのか、今何処でどうしているのか、私にはわからない。 せめて私に連絡くらいはと毎日待ったけれど、電話も手紙もなかった。 アパートに行ってみたけれど、お義母さんも行方がわからないと言い、アルバイト先でも急に来なくなったと云うことだった。 母に話して旅費を貰い、訪ねていった地方に住む伯母さんの処にもいなかった。 保護願いが出され、警察も未成年ということで事件、事故の線を調査したようだったが、結局何もわからなかった。 勿論ラウンジにも行ってみたけれど、ママは怒ったように知らないよと言ったきり店の奥に消えた。
 何の痕跡も残さず、忽然とゆうこは消えたのだった。
 

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