ゆうこ


七歳の時・・・、とゆうこが言った。 がらんとしたマクドナルドの片隅の、ちっちゃなテーブルだった。 暗い話ばかりで、ごめんね、とゆうこは断って、思い切ったようにそう言った。 私が家族のことを聞いたときだった。 
 「友達だから、暗いことだって何だって判っていたいと思うから・・・」
 と私は答えた。
 
 そうだと思う、本当の友達なら、いい時ばかりでなく悪いことだって共有するものだと思う。 リカは私の親友だよ、とクラスの友達の何人かがそう言うけれど、もし私が不幸になって真面目な話や暗い話ばかりしたら、きっと私を避けるだろう。 一緒にいて楽しいのだけが、友達なんだと皆んな勘違(かんちが)いしているようだ。 皆んな臆病(おくびょう)で、自分の人生に不幸の影が差すのが嫌いらしい、本当は人生の不幸な部分、みんなが暗いと嫌がることから学ぶことの方が多いのに。  
 
 外はますます雪が激しくなって、私達のいる店内だけが明るい照明の中ではっきりとした輪郭(りんかく)を持ち、窓外の行き交う人やネオンが灰白色に霞んで見えていた。
 「七歳の夏・・・、」 
 ゆうこが言った。
 


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