赤いキャンディーボックス~小話詰め合わせ!~
“ソレ”はボサボサの毛むくじゃらな体をバタつかせ、砂をまき散らせながら元気に吠える。
高い声。
少女によく似ている。
「ゴールデンレトリバー!」
彼は叫んだ。
夕日に「バカヤロー!」と叫ぶかのように、物凄い声で。
「バカッ!!そんなの見なくても分かるわよ!」
栖栗は、眉を顰めると彼と同じように叫ぶ。
一つ違うとしたら、少しヒステリック気味なところ、だろうか。
しかし彼は、そんな栖栗を気にすることなく、ゴールデンレトリバーの子犬を抱えながら駆け寄って来た。
そして、とても嬉しそうに──
「拾った。捨て犬だった」
と、言う。
それはきっと、犬が捨てられていたことに対してではなく、捨てられていた犬を助けられたということに対して。
彼は昔からそういう男だ。
それに加えて、面倒見もいいものだから、昔から何でも(女子男子、動物)寄って来る。