赤いキャンディーボックス~小話詰め合わせ!~
「いいわよ。犬は忠誠心があって大好きだから」
「まーた変なこと言っちゃってぇ‥さ、行きましょうか、“リツ”くん」
彼は、やぁねぇなどと女々しい声で言うと、子犬の頭をやんわり撫でる。
くすぐったそうに細められた子犬の目を、栖栗はじっとりとした目で見つめながら、指を差す。
「ちょっと‥何それ」
「オレと栖栗の名前を一文字ずつ拝借したんですー。可愛いってゆうか‥かっこよくね?」
「‥この子オスなんだ?」
どうやら、栖栗が聞きたかったことを彼が勘違いしてしまった、らしい。
「‥‥ん、そう。栖栗だって、オスの方がいいだろ?」
しかし、全く見当違いな発言をしてしまったことを恥ずかしく思うことなく、彼は人差し指を立てながら、首を傾げる。
「どっちでも。だって可愛いもの」
栖栗は、彼の言葉に緩く首を横に振る。
そして、子犬の頭にあった手を離そうとした瞬間──
「あっ!!!」
彼の腕から、素早く抜け出した子犬はアーチを描くように素晴らしいジャンプをし──
「わ‥っ」
栖栗の胸に収まった。