赤いキャンディーボックス~小話詰め合わせ!~
 
そして、栖栗は反射的に子犬を抱えると、それはもう満足そうに笑う。


「私の方が好きなのね!見る目あるわ!!」

「そりゃどうも」

「あんたじゃない!リツに言ってるの」


どこか照れくさそうにしながら、呟かれた彼の全く見当違いな発言に、栖栗が即否定する。

すると、そんな彼女に同意するように、それまで全く鳴かなかった子犬が、ワンッと元気よく吠えた。


「はいはい」


彼は、がっくりと肩を落としながら、恨めしそうに栖栗を見る。


「はい、は一回!」

「はーい」


だが、彼女にすぐ一喝されてしまい、彼は素っ気ない返事をした。

だけど、子犬を見下ろしながら柔らかく微笑む彼女を、憎らしく思えるはずはなく、彼は溜め息を吐いて、笑んだ。

無邪気、とは程遠い、穏やかで温かな笑み。


「これなら寂しくないな」

「‥‥?」


栖栗は、見たことのない彼の表情に戸惑いながらも、怪訝そうに首を傾げた。

そして深くにも、心臓がドクン、と跳ねてしまい、慌てて胸を押さえる。

彼は続ける。

 
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