彼女の嘘と俺の嘘


 すれ違う人々はおれには誰もが無関心。


 物を買ってお金を払うとき、無感情ではあるけれどコンビニの店員だけが相手をしてくれる。


 この前、不安になってある実験を試みた。


 混雑して大勢が行き交うスクランブル交差点で標的を見つけ、わざと肩をぶつけて標的を振り向かせる実験だ。


 信号が青になり、一斉に人が動き出す。


 前方から細身でメガネをかけ、薄茶のコートを羽織ったサラリーマンらしき風貌の男に狙いを定めた。


 神経質そうな顔が気に入った。

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