彼女の嘘と俺の嘘
シバ> なに?
『いつものやつ……チュッ』
回線を切ってからおれはなかなか眠れなかった。
キスの感覚を妄想していたわけではなく、サキが居眠りしている間、自分が寝てはいけないと思いコーヒーを飲みすぎたせいだ。
しかたなく何度も読み返しているマンガ本に目を通す。
内容を把握しているから眠気を誘えると思った。
しかし、このときのおれにはマンガを読むよりも優先してやるべきことがあった。
サキが居眠りした理由を考えてあげるべきだった。
そうすればもっと早く気づいてあげられたのに……。
ごめんね……サキ。