彼女の嘘と俺の嘘
午後11時06分……チャット真っ最中。
サキの面白おかしいお喋りをおれはいつものように聞き役に徹して笑っていた。
会話の中心がサキならば、おれが詮索されることはない。
『あのね、ヘッドセットが折れてたんだ』
シバ> 壊れたの?
『長さを調整する部分が折れただけで、ちゃんと使える』
シバ> どうして折れたの?
『お母さんの報告だとバカ兄が踏んづけたらしい』
シバ> それはお気の毒なのです