彼女の嘘と俺の嘘


 おれは他人行儀な訊き方をしてサキが口を開くのを待った。


『ああ、あれかぁ~。間違ってシバに送っちゃったんだね。オセロのチャットで知り合った女の子のお友達のこと覚えてる?』


シバ> 覚えてる。音声チャットとノートパソコンを使った第一号の相手でしょ


『その子と悲劇の話を作って送りっこしてる。変でしょ。友達も悲劇のヒロインになりきって送ってくるから楽しいよ』

 サキは笑いながら話した。


 こみ上げてくる怒りを抑えながらおれはキーボードに触れる。


シバ> そんなことして楽しいの?白血病で苦しんでいる人達はどう思うのかな?

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