彼女の嘘と俺の嘘


 今日は4月1日……エイプリルフール。


 おれは朝靄が残る道路の路肩で腰を下ろしていた。


 昨日敷いたばかりのアスファルトは真っ黒く、触ればまだ熱が伝わってきそうだ。


 いままでなら遅刻などに罪の意識を感じなかったおれが、20分も早く現場に来て仲間を待っている。


 少しは責任感というものが身についたのかもしれない。


 仕事が始まれば集中力を切ることは許されず、仕事が終わればグッタリして寝床で寝るだけの生活。


 仕事仲間が来るまでがサキのことを考えていられる貴重な時間。

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