元カレ教師
皆あたしが答えられるわけないと思っているようだった。
勿論、あたしだけでなくクラス全員が、だ。
だけど…
「世界共通の文化というのは…」
あたしは一段落を全て訳したのだった。
あたしが訳し終えると、昴はこう言った。
「はい。
じゃあまず最初の一文は…」
普通の教師だったら、ありがとうの一言ぐらいあるだろう。
だが、昴は言わない。
昴にとって、予習して、教師に当てられて答えるというのは当たり前の行為だからだ。
それからは何も問題なく淡々と授業は進んでいった。
そして暫くして、授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
なった時に、昴は言った。
「次の授業では、全員2段落を訳してくるように。
では、起立!」
最初の雰囲気は何処へやら、重々しい空気の中号令がかかった。
「ありがとうございました。」
号令を言った女子学級委員の声も、始まりのような生き生きした感じは全くなかった。