元カレ教師
「言って?」
先程の話の人物が数年でこんなにも優しく、大人になるのだろうか。
瞬時に湧いた思考はすぐに消え去ったが、その前に生まれた疑問は消えなかった。
「気になる事とかはね、その場で解決しないと後悔するわよ?」
「別にないです。」
あたしはそう言い切った。
「本当に?」
「本当です。」
わざとらし過ぎるぐらいの言い方に、我ながら焦った。
もう一回念を押されたら、口が滑りそうだ。
「なら、良いけど。
あ、もうこんなに暗いのね。
ご免なさい。
長く話しすぎたみたい。」
木下先生は会計の紙を持って歩き出した。
「先生の驕り。
内緒だからね。」
あたし達は2つめの秘密を作った。