元カレ教師
「みやびちゃん!」
あたしは人混みを掻き分け、倒れこんでいる彼女の脇にしゃがみ込んだ。
「みやびちゃん!
みやびちゃん!!」
脇腹から出る紅のものが生々しかった。
辺りには、まだ真新しい血の跡が点々と落ちていた。
「妃奈!!」
未来と阿紗子があたしの元へ駆けつけた。
「如月さん…」
阿紗子は声が掠れていた。
「…やく」
「え?」
未来はあたしの言葉を聞き取れなかったらしい。
パニック状態に陥っている回りの影響もあるのだろう。
「救急車速く!」
あたしが声の限りを叫ぶと、そこにいたサラリーマンが携帯電話を取り出した。
あたしはみやびちゃんに目を遣る。
「みやびちゃん…」
救急車のサイレンが鳴るまでの時間がとても長く思えた。
あたしはその間に何も出来なかった。
回りには野次馬が増えるばかりだった。