元カレ教師


「あの子、昔はあまり話をしてくれなかったんです。
自分の事も含めて。
だから、恥ずかしながら私はあの子のことをよく知らなかったのです。」


あたしは前にみやびちゃんの家に行った事を思い出した。


みやびちゃんは剰りにも似ていないという理由で、本当に親子なのかと、不安に思っていた。


「だけど、今年の夏休みぐらいからかしら、どんどん話をしてくれるようになったのですよ。
話題はいつも、妃奈さんと北条先生のことでした。
みやびちゃんは、お二人の事が本当に好きみたいなんですよ。」


雪が降りそうだった。


決して冷たくない、柔らかく、暖かい雪が。


「恐縮です。」


北条先生は一言そう言った。


あたしはというと、その一言を聞いて、やはり冷たい雪が降るような気がした。


あたしと北条先生は“過去”というどうしようもないもので、みやびちゃんを裏切ったのだ。


そして、それがこの事件が起こった事に繋がるから。


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