元カレ教師
「滝沢!」
北条先生はあたしを呼び止め、
ついでに手首まで握られた。
「…?」
え…
掴まれた手首は異様なまでに熱くなっていった。
その事に気付いた北条先生は「ご免」と言ってあたしの手首を解放した。
「…何でもねぇ。」
「何でもないって、」
じゃあ何で呼び止めたのよ。
しかも、そんな事までして。
「否、家まで送ってやろうかと思ったんだけど、お前に限ってはちょっとまずいよなって。
特に滝沢の姉ちゃんに見つかりでもしたらさ。」
北条先生は曖昧な笑みを浮かべて言った。
確かに。
この事をお姉ちゃんが知ったらどうなることやら。
「大丈夫です。
1人で帰れますから。」
あたしは出来るだけ平静を装い言った。
「そうか。
気をつけて帰れよ。」
「はい。
さようなら。」
「さよなら。」
あたしは準備室を出た。
学校は外と同じく真っ暗で、季節に似合わず少し肌寒い気もした。
だが手首だけは…
少し時間が経った今も熱をおびていた。