先輩★内緒の片思い
最後の曲がり角を左折し、家のある道に車が入っていったとき、母が家から飛び出してくるのが見えた。


「あれ?お母さん」


思わずつぶやくと、岸谷先輩が車を止めた。


「あの人?」


「はい」




母はまだ大雨の降る中を、傘をさしてはいるものの、ひどく慌てた様子で血相を変えてこちらに向けて走ってきた。


「何かあったのかな」


私が車を降りようとすると、岸谷先輩に「ちょっと待て」と止められた。


母が岸谷先輩のいる運転席の横にさしかかった。


先輩はウィンドウを降ろし、母に声を掛けた。


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