先輩★内緒の片思い
駐輪場には屋根はついていたけれど、明かりはなかった。


扉の前から見る限り、奥にある物置は暗い影でしかなかった。


しかし、私が呼んだとき、その影の下の方で何かが少し動いた気がした。


「卓っ?」




私は辺りを見回した。


扉の横は、50cmほどのブロック塀の上に1mくらいの網のフェンスがついた塀になっていた。


ここなら子供でも乗り越えられそうだ。




浴衣でさえなければ、ここを乗り越えて奥を見に行きたいけど。


私は今日、浴衣を着てきたことを再び後悔した。




私の視線の意味を理解して、岸谷先輩が動いた。


岸谷先輩は傘をたたんで扉に掛け、やすやすとフェンスを乗り越えて奥に走って行った。


卓、どうかここにいて。


さっきの影が卓でありますように。


岸谷先輩の後ろ姿を見送りながら私は必死に祈った。


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