先輩★内緒の片思い
岸谷先輩は、姿勢を変えずに口だけ開いて答えた。


「俺はいい」


「え、でも、葉子さんも向こうにいますし、みんなとビーチボールで遊んできたら……」


しかし、岸谷先輩はまた目を閉じてしまった。




……疲れてるのかな?


ずっと一人で運転してきたんだし、帰りも先輩に運転してもらうんだから、あんまりうるさく言うのもよくないかな。


私は自分のバッグから、持って来たミネラルウォーターのボトルを出してキャップをはずし、ひと口飲んだ。


隣に寝そべっている岸谷先輩の背中を時々盗み見る。


岸谷先輩の彼女は葉子さんだけど、今この瞬間だけは私が独り占め。


私はパラソルの内、岸谷先輩はパラソルの外だけど、手を伸ばせば届く距離に先輩がいる。


何かイケナイことをしているようなドキドキを感じながら、私は何度も水を口に運んでいた。



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