坂道
家のドアを閉めたときには、涙が溢れていた。


それから私は、幸運と言っていい分からないが、淑紀さんとはめったに会わなくなった。


たとえたまに会っても、話しかけることが私は出来なくなってしまった。


あの坂道に淑紀さんがいても、からかわないで淑紀さんになんて話しかけよう……


そう考えているだけで、何も話せずにいつも終ってしまっていた。


まるであのとき、笑いながら淑紀さんをからかっていたのが嘘のように……


淑紀さんに話しかけることも、笑いかけることも怖くなった。


こんな昔のことをいつまでも気にしてるなんておかしいかもしれない。


でも、坂道で見かけるたびに胸が苦しくて、その時がどうしても思い出されてしまう。


そう、あのときの淑紀さんの顔が……。
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