坂道
「花穂―、辞書貸して!」


「いいよー、まったく亜美はドジだね」


私と花穂はクラスが別々だった。


だから私は忘れ物をするたびに花穂のクラスに遊びに来ている。


「でもさ?どうせなら拓真に借りなさいよ」


花穂は私に辞書を私ながら呟いた。


「ダメだよ、だって拓真も持ってないもん」


「そうそう。俺が持ってくるわけないじゃん」


後ろで友達と話していた拓真が会話に加わってきた。


そう、私がこのクラスに来るもう一つの理由は、拓真がいるから。


クラスが拓真と別々になって、私達はずっと上手くいくってと思ってた。


あの人に会うまでは……。
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