先輩と私
2-10
「ん?問題ねーぞ?別に男が作ろうが女が作ろうが変わんねーだろ」
あ、やっぱり。ちょっと期待してた。馬鹿だな〜。
「そ、う、です、か」
声が出しにくい。
先輩の顔見るのやだな。
………先輩に顔見られるのやだな。きっと嫌な顔になってる。
うつむく。見ないで。
何だろ、涙、出そう。
出るな、涙。
「じゃあ、これからは、彼がお弁当作ってくれるようにお願いしますね」
何言ってるんだろ。そんな事、言いたくなんかないのに。
「お〜、今まで悪かったな。大変だったろ」
「…………いえ」
「………………?そうか」
大変だった。…大変だった。朝起きるの苦手だし、だんだん冷凍食品に頼るようになっちゃったし。
でもね、お弁当作って、渡せるのが嬉しかったんだよ。先輩と一緒にいる時間を作る機会ができて嬉しかったんだよ。
なんだろ。先輩と別れるわけでもないのに、ただ、弁当を作らなくなるだけなのに。
なんでこんなに、不安になるんだろ。
「沙樹ちゃん、私教室戻るけど、一緒に戻る?」
沙樹ちゃんがもう少しここに残るって。でも、私は、ここに居たくなかった。
「そっか、じゃあ、先、に、戻って、る、ね」
私は先輩達に挨拶だけ済ますと顔を見ることが出来ず、失礼だとは思ったけど、顔を上げずに教室を出た。
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