再生

言葉が出ない。

夏実の泣き声を聞いたのだろう。

仁志は心配そうに尋ねた。

『どうした、大丈夫か?』

『―…ひと…し…』


『夏実?どうしたんだ』

仁志に会いたい。

―でも、もう別れる悲しみを味わいたくない。

『―今までありがとう』

『夏実?』

『さようなら』

『夏実、おい待てよ、今どこにいるんだ!』

大好きだよ。

私の分も幸せになってね。

携帯電話を切り、夏実は声を押し殺して泣いた。

看護婦が心配して夏実に駆け寄ってきた。

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