再生

仁志は夏実を見て、

「お前はあの頃の俺の生きる希望だった」

「え?本当?」

そう言い、彼は黙った。

「でも全くそんな素振り見せなかったじゃない。いつも違う女の人ばかり付き合って」

「ねえちょっと」

「もう寝ようぜ。明日も早いし」

そう言い、電気を消した。

「仁志」

「私、昔の記憶は思い出せなくても、今凄く幸せよ」

彼は何も言わなかった。

正直記憶が戻らなくても、今幸せなのだから無理に思い出さなくてもいいのではないか、そう思い始めていた。
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