再生

仁志の表情が一瞬曇った気がした。

「ああ、そうだな」

すぐに笑顔になり、

「シャワー浴びてくる」

と言い、バスルームに入っていった。

夏実は不安がよぎった。

記憶が戻れば、幸せになれるんだよね?

ふと、米田の言葉が浮かんだ。

『過度のストレスから発病してしまうケースが多いね。現状から逃れたいために自己防衛で記憶を失わせてしまうんだよ』

―まただ。

息が苦しくなる。

夏実は紙袋を掴んだ。

口に袋を当て、呼吸をしてみる。

大丈夫、私は幸せになれる。

だって仁志がいるのだから。

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