再生
「それだけよ。後は特になし。アルバムも無かったし」
嫌味で言ってみたが、仁志は気にも止めずに真剣な顔をしていた。
「後は何も思い出さなかったのか」
「ええ」
仁志はあからさまに大きなため息をついた。
「分かってるわよ、私の記憶に何かが足りないのは。でもね、その何かが私の中で思い出させまいとしているの」
仁志は何か考えている様だった。
「私、もう考えるのやめようと思う」
仁志は驚いて夏実を見た。
「何で」