パパとママって呼ばせて。
秋はお腹を摩りながら、泣き疲れていた為の錯覚だろうと思い、少し横になろうと考え、立ち上がった瞬間であった。

誰かが秋を呼んだ。秋は自分を呼ぶ声の主を確かめる為、後ろを振り向いた。

「誰?」

そう言って振り向いた先の目線に映ったのは、幼稚園児くらいの歳をした少年であった。

「君が私を呼んだの?」

秋は少年に確かめる様に問い正したが、少年は無言のまま玄関を摺り抜け、姿を消したのである。

「嘘っ! 消えた?」

少年の行動に目を丸くして驚くと、秋は玄関へと走り勢い良く玄関のドアを開けた。すると、近くの道に少年の姿があったのである。それを見て、秋は叫びを上げる。

「君、ちょっと待って……」

そう言い、秋は階段を駆け降りて、少年の所へと向かう。それを見た少年はニッコリと微笑み、ゆっくりと歩き出した。

少年が歩き出したのを見て、秋もその少年の後を追う。やがて、人里から少し離れた森へと行き着いた。

「何処だろ、ここ?」

そう言って、秋は辺りを見回した。無我夢中で少年の事を追い掛けて来た為、自分が今、何処に居るのか分からなくなっていたのである。
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