パパとママって呼ばせて。
トンネルの中は、幾重にも重なった枝と葉で陰を作り、隙間から差し込む光がとても幻想的だった。

秋はその幻想的な一本道のトンネルの中を、ひたすら進んで行く。

ある程度進んだ所で、秋の手の平と膝に痛みが出て来た。それもその筈、地面には小枝や砂利が混ざっていたからである。

「痛っ」

そう言って、秋は痛みに顔を歪ませるが、一歩一歩と確実にトンネルを進んで行く。

「うわっ！」

秋は口を大きく開けて、驚いた。

秋の目の前に、木の枝がドーム状になった広場が広がっていたからである。

「…………」

秋は無言で立ち上がり、辺りを見回す。すると、広場の真ん中に堂々と佇む大木に、秋の目が行った。

恐らく、ドーム状に張り巡らされている枝は全て、この大木の物だろう。

秋が大木に目を奪われている間に、少年はいつの間にか秋の後ろ側へと移動していた。そして、秋に声を掛ける。

「ねぇ」

「うわっ！　びっくりした。いつの間に私の後ろに居たの？」

秋は後ろを向いて少年に声を掛ける。少年は秋の言葉を聞くと、大木の根本を指差した。秋は、少年が指差した根本に近付いて行く。
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