パパとママって呼ばせて。
秋の目から再び大粒の涙が溢れた。でも、悲しくはない。自然と笑みが零れる。
勇樹は今でも自分の中に生きている、自分と勇樹の生きた証、愛し合った証がそこに在るから、秋は嬉し涙をぽろぽろと流し、地面を濡らす。

「有り難う」

笑顔で言うその言葉が秋自身の曇った心を晴れ渡して行く。

もう、心が曇る事は無い。
もう、心の雨が降る事は無い。

涙を拭った秋は少年と手を繋ぎ、地球に存在しているとは思えない程の美しい森を歩き出した。

「パパとママって呼んでね」

秋は笑顔でぽつりと呟く。
秋のその言葉を聞き、少年はにっこりと笑う。

勇樹の生きた証、勇樹を愛した証が秋の少し膨れたお腹の中に在るから――。

秋は言う。

「一人じゃないから生きて行ける」と……。

そう、ここまで秋を導いた少年が生き続ける限り、勇樹との絆は決して消える事は無い。
勇樹と秋が生み出した愛の結晶は、いつか必ず誰かを好きになり、愛の灯をともすだろう。
やがて新たな愛の結晶を生み出し、その灯が消える事は二度と無い。
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