先生×自分
「親を殺されてから、誰も信じないようにしてきたんだろうね」

「親、殺されたんすか?」

貴志さんは大きく頷いて、コーヒーを一口飲んで話を続けた。

「知り合いの人にね。両親とは、友達だったみたいだけど」

知らなかった。交通事故とかかと思っていたから…聞いてびっくりした。
俺は、南達がいる部屋の扉を見つめた。

「その話を聞いた後ね、私は南を娘にしようと思って」

笑顔で貴志さんは言った。もう一度、コーヒーを飲んで立ち上がった。

「あの子に、家族を教えたかったから娘にしたんだ。要君、恋人にはなれないのなら、家族になってあげてくれないか?」

…家族。
恋人になれないのなら、家族としてあいつを支えてやる…それが俺のやれること。

「…はい」

「ありがとう」

確かに恋人にはなれない。あいつの目には吉田しか見えねぇ。
…もう割り切るしかねぇんだよな。これからは家族として傍にいる。これが俺の………なんてな!

家族としてでも、俺はあいつが好きだからな。

俺、馬鹿だし考えることも馬鹿なことだけど…まぁ、それは置いといて。

諦めなくちゃいけないって誰が決めた?つか、諦めるはずねぇじゃん!

「貴志さん!俺、家族としても支えるけど、でも好きなのは変わらないんで」

「ふふっ。分かったよ」

クスクス笑う貴志さんに俺は、最高の笑顔で返した。
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