向日葵の下で
信頼
そろそろ起きてくる患者さんも多くなってきたので、私と鈴木さんは3人を使用していない個室に案内した。
待合室で話をしていたら病院内が大パニックになりかねないとの鈴木さんの意見だった。
私はよく分からないけど・・・とにかくすっごい有名人らしいから・・・。
「本当に、ご迷惑をかけてしまってすみません。でも、俺たちも樹がこんなことになっているなんて・・・思いもしませんでした」
長身の男性が言った。
大きな背中が力なく、ぐにゃりと曲がっているのを見ると、一晩まともに寝ていないことが伺えた。
ライブなんて相当体力を使うものの後で、それでも眠れないというのは辛いことだろう。
「あの・・・きっと、これからもお世話になると思うので・・・俺は志田恭平といいます」
「佐上晴です」
「萩野信二です」
長身の男性、小柄な男性、金髪の男性の順に軽く頭を下げる。
私と鈴木さんもつられてお辞儀する。
「看護師の佐々木と申します」
「かっ、看護師の、鈴木です」
鈴木さんは明らかに緊張していた。
まぁ、今までずっとブラウン管を通してでしか、よくてもライブ会場で何メートルも離れている位置からしか見たことが無かった人たちが、自分と1メートルも無い位置にいて、あまつさえ自分に話しかけてくれているんだから、当たり前といえば当たり前ではあるが・・・。