向日葵の下で
慌てて病院に駆けつけたところ、私の目の前に広がったのは、先ほど見たテレビに映っていたものと全く同じだった。
入口に群れる大勢の人、警備員の方がファンを抑えつつ、大群に埋もれた患者さんを一人ひとり病院の中に引っ張り入れている。
「うっわ・・・」
予想以上の事態だった。これでは緊急で運ばれてきた患者さん、診察や治療を受けに来た患者さんが病院内にすんなりと入れないではないか。
私はとりあえず裏口に回って病院内に入った。
多分新聞かテレビの取材をしてる人たちであろう何人かに話しかけられたが私は全部無視をした。
急いで着替えて婦長の元へ行く。
「失礼します」
婦長室の扉をノックすると、どうぞ、と返事が返ってきた。
私は扉を開けて室内に入る。
婦長は重苦しい顔をして机にひじを突いていた。
「あの・・・何か、大変なことに・・・」
「そうなのよ。当たり前よね、今大人気の『SHANGRI-RA』だもの。でもね、佐々木さんを呼び出したのはそのことじゃないのよ」
「へ?」
私はてっきり病院の前に群がるファンに向かって帰るように説得する役をやらされるのかと思っていた。
しかし、あっさりとそれは否定されてしまった。
だったら何故?
「佐々木さん、『SHANGRI-LA』について、本当に何も知らないのね?」
婦長は椅子から立ち上がって私に言った。
威圧感があった。
いつもの優しい婦長とは、どこか違った。
「は、はい・・・」
私がそう答えると、婦長はホッと方を撫で下ろした。
「よかったわ。やっぱり、佐々木さんしか頼める人がいないのよ」
「あの・・・何がですか?」
「よく聞いて佐々木さん。あなたはこれから他の患者さんの面倒は見なくていいわ」
「は?」
私は意味が分からなくって思わず聞き返す。
「話しは最後まで聞いてちょうだい。あなたはこれから、雪村樹さんだけを担当して欲しいの」
「ど、どういうことですか?」
婦長の話によると、私が夢の中にいる間、病院内では結構大変なことが起こっていたらしい。