向日葵の下で
「わかんない」
言ったのは佐上さんだった。
「わかんないよ。俺たちと過ごした時の記憶がなくなったから、もう友達でも仲間でもないなんて、おかしいよ」
「それはお前が勝手に思ってるだけだろ。迷惑なんだよ、こっちからしたら」
「友達でも仲間でもない奴がお見舞いにくることがそんなに嫌なことなの?」
「あぁ、気分がわりぃ。昔の記憶を思い起こそうとしても頭が痛くなるだけなんだよ。だから、昔の俺の話なんて聞きたかねぇんだよ」
「今の樹って、本当に昔のまんまだ。ワガママで自己中でイヤミったらしくて・・・頭が固い奴ってホントむかつく」
「はぁ?お前、何調子乗ったこと言ってるわけ?」
雪村さんはキッと佐上さんを睨みつけると、そのまま胸倉を掴んで力強く引き寄せた。
私はまずいと思って慌てて二人を引き剥がそうとする。
「ちょっと、落ち着いてください!!」
「あんたは黙ってろよ」
雪村さんは低い声で忠告した。鋭利な目が私を一瞥した瞬間、私は体に力が入らなくなった。
キレてる。
私の思考回路はそう判断を下した。
「お前さぁ、ウザイんだよ。そうやって俺に馴れ馴れしくしてくるところも、ガキみてぇな喋り方も仕草も・・・キモイから視界から消えてくれ」
「馴れ馴れしいって何?俺はいつも通りに樹に接してるだけだよ」
「それがウゼーんだよ、こっちは記憶が飛んじまってんだからそんなことされてもむかつくだけだっての。少しは気ぃ使え!」
「バッカみたい。悲劇のヒーローぶらないでくれる?」
「あぁ?ふざけろよ?てめぇなんかに俺の気持ちなんて分かるかよ!何も知らないくせに勝手なこと言ってんじゃねぇよ!!」
「ホントに今の樹って視野が狭くて馬鹿だね!確に、樹は俺たちのことも、『SHANGRI-LA』のことも忘れてるかもしれない。でも、だから友達でも仲間でもないなんて有り得ない!!絶対認めないんだから!」
「お前っ」
「これまでの記憶がないんなら、今から友達になればいいじゃんか!!」