a wings


憂鬱な気持ちでリビングのドアを開けると、思いの外、大学生の兄の千晶だけがテーブルについていた。


「お父さんとお母さんは?」


「朝から会議」


杏里には目もくれず、コーヒーを飲み終えた千晶は、面倒くさそうにそれだけを言い残して出ていった。



杏里は、千晶のそんな態度にもう慣れっこになっていた。


もう何年も続いている日常茶飯事だ。



とりあえず学校に行かなければいけないので、トーストとコーヒーを用意して食べ始める。


しかし、食欲がないことに気付き、トーストを一口だけかじるとゴミ箱に捨てた。



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