恋色アンブレラ
ナイトには失礼な話だが、私は「彼」に出逢った次の日にはもうナイトに別れを告げていた。

「ゴメン、好きな人が出来た。」

なんていう、まるであたかもその好きな人と付き合っているかのような口ぶりで。

当時は私もまだまだ子供だった。なんたって中学生だから。

15歳という中途半端な年頃の娘の思いつきの行動力はすごかった。

ナイトは笑っていた。もともと僕が一方的に好きになって告白しただけですもんね、だなんて言って。

本当はナイトは私の何十倍も別れを惜しんでいたに違いない。私の勝手に振り回されているにもかかわらず、笑顔で私の顔をまっすぐに見つめるナイトは

年下の彼氏でもなく、可愛い後輩でもなく

ただただ大人だな、と思った。

ナイトに告白されてから半年がたった。始めはナイトの必死さに負けて付き合いだしたんだから実際のところは後輩にしか見れなかった。

しかしそのうちに、かわいさの中に見える力強さだったり、優しい笑顔に私も惹かれていたんだ。

今になっては私にとってナイトはかけがえのない存在だったに違いない。

それでも私は彼を選んだ。

名前も知らない、一度しか見たこともない彼を選んだ。

こうして私の恋物語は始まったのだ。
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