平和祈念作品集
 と、ターレスが膝をついた。

「長老、大丈夫ですか!?」

 ルーイが声をかける。

「さすがに、連続して呪法を使うのは、辛いな。年を取りすぎたようじゃ」

 ターレスは、肩で息をしながら、そう呟いた。

 ルーイは、離れた場所から、回復の呪文を唱えた。

「我が体に在りし力よ、その力を癒しの力に変え、彼の者を癒せ!レミール!」

 ターレスの体が橙色の光に包まれた。

「おお…体力が回復していく」

 ターレス自身、ルーイの能力がこれほどまでに成長しているとは思ってもいなかったようだ。

「ルーイ、成長したな。シライアス殿の見込み通りじゃ」

「いえ、…私など、まだまだです」

 ルーイはそう言って、目の前に現れた敵に、短剣を突き刺した。

「青き風よ、その姿を竜巻へと変え、行く先々の者を切り刻め!サバナバル!」

 遠くの方から、シライアスの声が聞こえた。シライアスの放ったと思しき竜巻の風が、ルーイの近くへも押し寄せた。

「ルーイ、ここは儂が何とかしよう。おぬしは、シライアス殿をお守りせよ」

「でも…」

「儂のことは心配するでない。おぬしのおかげで、体力も回復しておるしな」

 ルーイは、シライアスの方を見た。

 自分たちのいる所に比べて、敵の数が多いようだ。

 いや、ルーイ自身が、戦いたくないが故に、敵の少ない所へと、無意識のうちに移動していたのかもしれない。

「…わかりました」

「では、シライアス殿を頼んだぞ」

 ルーイは頷き、その場を離れようとした。

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