平和祈念作品集
 しばらくその映像を見ていると、ニュースキャスターの人が、いつもよりも早口で「アメリカで起こった出来事」と伝え、映像を紹介していました。

「え?アメリカ?」

 アリサのお母さんは、驚いています。

「アメリカが、どうしたの?」

 状況が飲み込めていないアリサがそう尋ねると、アリサのお母さんは、深刻そうな顔をして、言いました。

「どうやら、誰かが、飛行機をハイジャックしたみたいね」

 アリサは、「ハイジャック」という言葉を、何度か耳にしたことがありました。

「それって、悪い人がすることだよね?」

「そうよ。その、悪いことをした人が、あのビルに追突するように指示したのかもね」

 アリサは、お母さんの手を握りました。

「お母さん、わたし、怖い…」

 アリサのお母さんは、アリサをぎゅっと抱きしめて、こう言いました。

「そう、怖いことなのよ。でも、これも現実に起きたことなの。怖いからって、目をそむけちゃだめよ」

 アリサは、だまってうなずきました。

「…こんなこと、日本では起こらないよね?」

 アリサの問いにどう答えていいのか、アリサのお母さんは悩みました。

「今は大丈夫だと思うけど…そういうことをさせないのが、アリサたち、子どもの役目よ」

 そう言いながらも、アリサのお母さんも不安で胸がいっぱいでした。
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